研究概要 |
組織文化と業績の因果関係の方向性を検証するために,上場企業に勤務する600名の従業員に対して質問紙調査を行い,171名から回答を得た(回収率28.5%)。データ分析の結果,「イノベーション」「部品間コミュニケーション」「階層間コミュニケーション」「従業員志向」の4次元からなるスケールが開発された。本研究の研究方法は,第1段階として,上場企業から組織文化に関する定量データを収集し,第2段階として,1年後,2年後,3年後・・・の当該組織における業績指標(売上高利益率等)との関係を多変量解析によって分析するという手順を踏む。したがって,現時点では,組織文化と業績との因果関係に関する結果は得られておらず,今後,時系列的に分析を進める予定である。 なお,組織文化が業績に影響を与えるプロセスを探索するために,本研究では,組織文化と組織変革との関係に着目し,追加調査項目として,「組織変革が実施されている程度」,「組織変革の認知の仕方」,「組織変革に参加する姿勢」等に関する要因を導入した。これらの要因を分析した結果,組織文化は,組織メンバーの組織変革に対する認知や,組織変革への参加姿勢に影響を与えていることが明らかになった。このことから,組織文化は,組織変革を促進したり抑制したりする働きをすることによって,長期的な業績に影響を与えていることが示唆された。組織文化-業績の関係は,これまでブラックボックスであったが,本研究によって両者をつなぐプロセスを解明する上での手がかりが得られたと考えられる。
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