NEC、松下、シャープなど代表的な加工組立型産業のリーディング・カンパニ-数社に対してヒアリング調査を実施した。その結果、原価企画における多くの成功事例には源流管理、職能横断的組織、重量級プロダクトマネージャー、原価企画事務局組織、教育と普及のシステム、マイルストーン管理、デザイン・インなど特徴的なマネジメント・システムの存在が特定できる。さらに、原価企画を成功に導くためには粗かな知識を創造する柔軟な組織コンテクストが不可欠であり、原価企画のシステムの導入と定着のプロセスで組織変革が不可避的に生じていることも観察可能である。これらは、すでに実施していたアンケート調査の結果をサポートし、原価企画のモデル化へとつながる研究成果である。 さらに、当該研究では、サプライヤー側にも調査を実施している。その結果、デザイン・インについて従来指摘されてきた系列に代表される日本的な取引関係がかなり変化してきているのが分かった。すなわち、系列を超えた取引の急増、体力や技術力の低いサプライヤーを支持しきれないアセンプラーといった条件の変化によって、日本固有のグループ企業管理という要因の重要性が低下してきている。 確かに欧米企業も原価企画を導入し、成果を挙げつつあるが、それはCALSなどの情報システムを組み合わせた形でのものであり、日本型のそれとはアプローチが異なるといえる。しかし、両者にはともにリエンジニアリングを引き起こすメカニズムが組み込まれている。今後の原価企画には、日本企業が実践してきた暗黙知に根ざしたマネジメントと欧米における情報技術などを明示的に組み込んだマネジメントをバランスよく組み合わせ、組織変革を引き起こすシステムとして位置づける必要があるといえよう。 以上の研究成果は、すでに2本の論文として公表した他、ヨーロッパ会計学会、アジア太平洋学際会計学研究学会において研究報告し、現在同学会のジャーナルに掲載すべく準備中である。
|