Kirillov-Kostant理論により有限次元Lie群の既約表現を、群上のHaar測度に関して2乗可積分な函数空間の上に実現したとき、群の余随伴軌道の上のFeynman経路積分を計算することにより、有限次元Lie群の既約ユニタリ表現が得られることが前の共同研究によりわかっていた。そこで今回の研究では、同じ手法を無限次元Lie群に適用可能かどうかを調べることを目標とした。ただ単に無限次元Lie群といっても漠然とし過ぎているので、最も基本的だと思われる無限次元Heisenberg群の余随伴軌道の上のFeynman経路積分を計算し、無限次元Heisenberg群のKirillov-Kostant理論で構成された既約表現が得られるかどうかを調べた。 そこでわかったことは、有限次元の場合とまったく同様にして、無限次元Heisenberg群の既約表現が得られることがわかった。さらには、無限次元Heisenberg代数(=無限次元Heisenberg群のLie代数)のFock表現(=無限個の変数からなる多項式環の上の表現)からVirasoro代数の表現が同じFock空間の上に実現されるという事実を用いて、無限次元Heisenber群の余随伴軌道上で、対応するHamiltonian函数をもったFeynman経路積分を計算することにより、Virasoro代数の各基底の表現作用素(=Virasoro作用素)の生成するone-parameter群を構成した。またこのone-parameter群はVirasoro代数の作用と両立する、すなわちintegrableであることもわかった。 ただしこれでVirasoro代数をLie代数にもつ群、すなわち単位円周上の微分同相写像のなす群の中心拡大の表現が得られたわけではない。
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