研究代表者は、4次元多様体の微分不変量の一つであるドナルドソン不変量の計算を研究目的とした。その計算手法の一つとして挙げた代数幾何的手法を使って、ドナルドソン自身がいぐつかの計算例を出している。その結果の一般的な代数曲面族への拡張を研究代用者は試み、位相不変量p_g=2、K^2=1を持つ一般型代数曲面のドナルドソン不変量を決定した。しかしモジュライ空間のコンパクト化を決定するときに、その代数曲面固有の位相的性質が不可欠であり、これを一般的に適用可能な計算アルゴリズムに拡張することは困難であった。 しかし、最近コンパクトなモジュライ空間を使ったサイバーグ-ウィッテン不変量と呼ばれる新しい4次元多様体の微分不変量が発見され、同時に全ての代数曲面に対してその値が完全に決定された。更に、サイバーグ-ウィッテン不変量とドナルドソン不変量の情報を同時に含んだ非可換モノポール方程式のモジュライ空間が研究されている。研究代表者は、現在この空間の研究に着目しており、特に代数曲面の場合にそのモジュライ空間の構造を解析することにより両者の関係を調べている。 更に、ドナルドソン不変量のもう一つの計算方法として挙げた微分幾何的手法についても、このモジュライ空間を研究することによって、別々に得られている二つの不変量の和公式の関係を調べ比較的に解析可能なサイバーグ-ウィッテン不変量の和公式からドナルドソン不変量の和公式を導き出すアルゴリズムを抽出することを試みている。
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