研究概要 |
本研究の第一目的である非同時項に微分を含まない高次元の波動方程式の基本解を積分表示することは達成された.しかし.その一方でこの表示による解の接続原理は非常に難しいことが判明した.具体的には解を上から評価することは.求められている関数空間では不可能に近いことがわかった.ところが良く表示の性質を調査したところ.下からの評価には適していることが判別し,応用として半線形方程式の解の爆発理論にこの表示が利用できることもわかった.そこで得られた重要な結果は,半線形波動方程式の初期値問題を考えるとき初期値の無限遠方での状態を無視して一般論は形成できないというものである. この結果が各方面に与える影響は多大なものである.例えば解の正則性も論ずるときに出発点としてどの空間から初期値を与えれば良いかという問題に対して、これではダメであるという否定的な見解から枠組を作ったことになっている.その他にも非線形問題を考えるとき、線形部分の解の評価だけを用いて理論を形成することはあり得ないという良い例になっている. 今後の発展として初期値の正値性がどの様に解に反映しているかを研究する重要な課題も発生した.これに関しては本研究の期間だけでは不十分であるので平成8年度で新たに研究を展開していく予定である.
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