無限次元空間の測度に関して、特に密度定理を主眼に置いて研究を行った。 密度定理は、多くの研究者により盛んに研究されている分野で、フーリエ変換を始め様々な分野に応用される。密度定理に関する研究では多くの場合、空間が有限次元であるという条件、もしくはそれに準ずるdoubling conditionという条件を仮定したものが多く、その解析において、本質的な役割をはたしている。それは、基本的にビタリ型の被覆定理がその根幹をなすと予想されるが、無限次元空間の場合この被覆定理は成り立たない事が知られている。実際、無限次元の場合まったく一般には密度定理自身が成り立たない事もしられているが、このばあいでも何らかの形で密度定理に相当する性質があるだろうというのが多くの研究者の予想するところであろう。実際オルンシュタイン-ウーレンベック半群は、積分型で定義され広域的な密度定理における近似列に類似する形をしているが、特定の場合には対応する収束をする事が知られている。これに関連して、ホワイトノイズ空間における有限正測度に拡張されたオルンシュタイン-ウーレンベック半群が、弱収束の意味でもとの測度を、確率収束の意味でウィナー測度に関するルベ-グ分解の絶対連続部分の密度関数をそれぞれ近似するという結果を得ている。(Kyoto Jour.'95.10に発表) 密度定理は、局所的なものと広域的なものにわける事ができる。有限次元空間の場合(またはdoublin conditionを仮定した場合)は広域的な密度定理は直接証明する事もできるが(H.Sato)局所的な密度定理により導く事もでき(Calderon and Zygmund;ただしユークリッド空間の場合)局所的なものを認めると直接証明より楽に証明される場合が多い。ただし、いつでも局所的な密度定理から広域的な密度定理が導かれるわけではなく、何らかの条件が必要となるが、本年度行った研究において、一般の距離空間とその上で定義されたσ-有限測度に対して、局所的密度定理から広域的密度定理が導かれるための必要十分条件を得る事ができた。(科研費シンポジウム於福島大H.7.10.27にて口頭発表)この研究は佐藤坦氏(九大数理)との共同研究で行われたが、同氏の海外出張のおかげで、様々な情報を電子メイル等を用いて密に手に入れる事ができた事をつけ加えて置きたい。
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