研究概要 |
ノイズ付きバーガーズ方程式と呼ばれる確率偏微分方程式について考えた.この方程式は自然科学の様々な分野で現れる,重要な方程式の1つである.物理などの文献では通常ノイズとしてホワイト・ノイズが用いられ議論がされているが,これは数学的には深刻な困難を導く.というのは,方程式にノイズの空間微分の項が含まれているため,1次元でも解が超関数になってしまって,非線形の項の意味が付けられなくなってしまうためである. そこで本研究では,ノイズに空間変数についての滑らかさを課して,方程式の解の意味を与え,適当な仮定の下で解の存在性を示した.この証明中で用いた重要な手法は,ノイズが無い場合にCole-Hopf変換と呼ばれるものに相当する(logを含む)非線形な変換である.これを正当化することによって,ノイズ付きバーガーズ方程式は線形なノイズ付き熱方程式に変換される.そしてこの線形方程式において形式的にノイズがかかっている項をポテンシャルと見てしまえば,ファイマン・カッツ型の表示をもつ一意解をもつことが容易に予想できるのであるが,実際これは証明することができた.この表示により例えば,初期条件が正であれば解は任意の時刻でも正となることが導かれ,logに代入する事が許されることは明らかである. その他にも,初期条件とノイズの滑らかさに応じて,解も滑らかになることが示された.また,このCole-Hopf変換による中間的なステップにおいて,上と同じノイズを持つKPZ方程式の解も副産物として構成された.
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