本年度は主として活発な星形成領域の一つであるオリオン星雲領域の「あすか」衛星により取得したデータの解析を行った。観測領域には明るい天体の他に強度が弱い天体や「あすか」では点源に分離できない領域が含まれている。星形成領域に存在する天体の特徴を明確にするため、観測領域を複数の天体を含んだ4つの大きな領域に分割してスペクトルを集積し、この統計の良い平均のスペクトルの特徴を調べてみた。いずれの領域も1温度の高温プラズマガスモデルでは説明できず、少なくとも2温度のモデルが必要であることがわかった。2温度で合わせた場合の高温成分の温度は3×10^7K以上となる。 次に領域毎の平均スペクトルと個々の天体のスペクトルを比較するため、検出された天体のうち統計の良いものについてスペクトルを調べてみた。その結果、いずれの天体も10^7K以上の高温成分が必要であること、統計の良いものには、領域毎のスペクトルと同様、少なくとも2温度が必用なものがあることがわかった。 観測を行った時期には個々の天体からフレアのような活動性は観測できなかった。若い天体はフレアのような突発的な活動性のみならず、小さなフレアが表面全体で起こっていることも含む比較的定常的な活動性も伴っていることになる。 今後は他の波長の結果との比較や、オリオン星雲領域以外の星形成領域の結果との比較を行い、星形成領域における磁気的活動性の統一的な理解を目指す。
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