研究の目的は、太陽コロナ中で起きているさまざまなスケールの活動現象を、磁気リコネクションという共通のエネルギー開放メカニズムを通して理解することにある。この目的を達成するには、すでに打ち上げ以来4年以上観測を続けている科学衛星「ようこう」のデータを解析する必要がある。本研究では、まず大量のデータの取得、解析環境の充実、能率的な解析を目指してきたので、結果を以下に報告する。 まず、宇宙科学研究所に保存されている「ようこう」のデータをエクサバイトテープを介して、当研究所に持ち帰り、当研究所にデータベースを構築した。現在も作業中であるが、全データのうち80%程度のデータはすでに揃えることができた。また、宇宙科学研究所を中心に開発されている「ようこう」データの解析システムも当研究所のワークステーションに移植し、解析環境も整ってきた。 研究は、太陽コロナ中の活動現象のうち、インパルシヴフレア、長時間フレア、巨大アーケード形成の3つの現象の比較を中心に行った。これらは、空間的な大きさ、継続時間、軟X線強度、硬X線強度など、一見するとまったく異なる現象である。が、それらの軟X線ループ形状や高温プラズマの分布箇所、時間変化の様子は、3つの現象に共通で、いずれもループ上空での磁気リコネクションによるエネルギー解放を示唆している。今後、さらに解析イベント数を増やすことによってこれらの現象の統一的な理解がえられることが期待できる。
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