本研究の主な目的は、(1)広島大学に於いてX線観測データの解析システムを構築すること、(2)それを用いてX線天文衛生『あすか』によって得られた彗星木星衝突時のデータ解析を行うこと、であった。(1)に関しては、多少の問題点はあるものの概ね達成することができた。(2)については、彗星衝突以前の木星の観測データとも比較し、以下の事柄を明らかにした。 (i)彗星衝突による有意なX線の増光は確認されなかった(<3×10^<-13>erg/sec/cm^2(1-10keV)) (ii)数日のオーダーで木星起源のX線強度が変動していること(〜10^<-14>erg/sec/cm^2(1-10keV)) これらの結果について、平成7年秋に国立天文台で開催された"パルサー惑星系とその関連天体"研究会でその報告を行った。 また上述(1)が遂行できたことに関連して、ブラックホールを含むX線新星GS2000+25のデータ解析も並行して行った。その結果として、(i)アウトバーストの約225日後にHigh-stateからLow-stateへのtransitionが起きたこと、(ii)High-stateでは降着円盤起源であるソフト成分と逆コンプトン散乱起源のべき型成分の2成分のX線輻射が存在し、Low-stateではべき型成分のみが存在すること、(iii)またこれら二つのstateでのべき型成分は、エネルギースペクトル(Photon-index)だけでなく、X線強度の短時間変動の特徴(Normalized Power Spectral Densityの絶対値)からも、全く異なる輻射であること、(iv)これらの特徴は、CygX-1のようないわゆるpersistentのブラックホールでも見られ、ブラックホール候補星の共通の物理現象であること、などが明らかになった。これらの結果については現在PASJに投稿中である。
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