日本の高エネルギー研究所およびアメリカのスタンフォード線形加速器研究所で非常に多くのBメソンを作り出すBファクトリー計画が進行している。この計画の主な目的の一つは小林・益川行列のユニタリティーを検証し、CPの破れの起源を探ろうというものである。このために小林・益川行列の各行列要素を精密に測定する必要がある。しかし、実験で得られた物理量の値から、行列要素の値を決定することは、一般に非常に困難である。これは、強い相互作用の不定性によって、物理量を精密に予言することが難しいためである。本研究の目的は、このような困難を回避し、Bファクトリー計画で小林・益川行列の行列要素を精密に決定する方法を考案することであった。山田は三田(名大)とともに、Bメソンが他のメソン一つと二つのレプトンに崩壊する二種類の崩壊過程を用いて小林・益行列要素の一つを精密に測定する方法を考案した。この二つの崩壊過程において、一方の崩壊過程を記述する相互作用ラグランジアンに、重いクオークの近似を使うと、他方の相互作用ラグランジアンにほぼ等しくなる。ここでBメソンが崩壊してできたメソンが止まっている極限を考えると、この二つの過程における強い相互作用の影響は、フレイバーSU(3)対称性が成り立つ近似の範囲でまったく等しくなる。従ってこの二つの微分崩壊幅を割れば強い相互作用の影響を取り除くことが出来る。このようにして行列要素の値を決定することが出来る。この二つの崩壊過程は、どちらもBファクトリーで精密には値を決定することが出来る。この二つの崩壊過程は、どちらもBファクトリーで精密にはかることが出来るので、将来この方法が役に立つと期待している。
|