研究概要 |
申請者は本研究以前に、銅単結晶表面上のリチウム蒸着において、興味深い表面秩序合金の形成を見いだした。そこで、本研究ではこのような現象が一般的であるかどうかを確認するために、基板金属や蒸着アルカリ金属の種類を変えて実験を行った。 まず、基板金属として銀Ag(001)を用い、室温でナトリウムを蒸着して形成される表面周期構造を観察した。その結果、(2x1)→(3x3)→(4x2)→(2x1)という変化が観察できた。このうち最初の(2x1),(3x3)については低速電子回折によって構造決定を行い、銅Cu(001)-リチウム系と全く同じ構造であることを確認した。銅-リチウムの金属結合半径の比と銀-ナトリウムの金属結合半径の比は同程度であり、サイズと形成する表面合金構造に関係があることがわかった。また、アルカリ金属の中でリチウムだけが特殊なわけではないことが明かとなった。 次に、基板金属としてニッケルNi(001)を用い、室温より少し高い温度(50〜200℃)でリチウムを蒸着して形成される表面周期構造を観察した。その結果(4x4)→(5x5)という変化が観察できた。これらについてはまだ構造決定ができていないが、(3x3)と同じような構造であることが期待できる。 今後、ニッケル-リチウム系で観察された(4x4),(5x5)の構造決定を進めていきたい。また、最近Vargaらは銅表面上の鉛の蒸着を走査トンネル顕微鏡によって研究しており、我々の結果と似た構造モデルを提出している。このことは本研究で扱っている表面秩序合金がアルカリ金属蒸着の場合だけに限らない、より一般的な現象であることを示唆している
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