ポジトロンを微粒子系に入射すると、多くの場合、微粒子間に、陽電子と電子の水素状束縛状態であるポジトロニウムが生成する。このポジトロニウムは、微粒子内に浸入せず、微粒子の最表面をサンプリングする性質を持っている。また、ポジトロニウムは、不対電子とスピン交換反応を起こすことがしられている。この、ポジトロニウムを用いて、微粒子表面に照射で生じた常磁性中心を調べるのが、本研究の目的である。 陽電子寿命測定法を用い、アモルファスシリカ微粒子系のポジトロニウムの寿命測定を行った。まず20K度の低温で測定したところ、ポジトロニウムの寿命は室温と同じで、135ns程度であった。ここで、サンプルを低温に保ったまま、ラジオアイソトープからの高速陽電子をサンプルに照射したところ、ポジトロニウムの寿命が顕著に減少した。この結果により、陽電子照射によって、微粒子表面に常磁性中心ができ、それとポジトロニウムのスピン交換反応が起きることがわかった。照射後、サンプルを室温に戻したところ、ポジトロニウムの寿命はもとにもどった。このとき、温度依存性を調べると、微粒子表面に生成した常磁性中心は、200K以上では不安定であることもわかった。この研究により、ポジトロニウムの、表面常磁性中心に対するプローブとしての有用性が示された。
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