超高真空中の蒸着・固相反応で作製した膜厚が数nmの超薄膜PtSiの電気伝導の温度依存性を調べた。電気伝導率の温度変化は、低温では電子間相互作用による対数的な振る舞いを示した。磁気抵抗には強いスピン軌道相互作用による反局在および超伝導のゆらぎによる伝導度の増加のため正の磁気抵抗が見られた。さらに0.8K以下の極低温で超伝導とアンダーソン局在が競合していることを見いだした。これらの結果をアンダーソン局在および超伝導のゆらぎの効果を取り入れた理論による解析を行うことでキャリアの非弾性散乱による位相緩和時間を推定し、超伝導転移温度の膜厚依存性を説明した。 PtSi超薄膜に光(波長λ=0.95μm)を照射することで電気伝導率が増加し、正の磁気抵抗が現れることを見いだした。この現象は膜厚が薄いほど顕著に現れ、Si基板の熱励起キャリアがほとんど無くなる77K以下で観測される。磁気抵抗は磁場の向きに敏感で、薄膜に垂直な磁場の向きで顕著に生じる2次元性を示した。超高真空中で作製したPtSiとSiとの界面は不純物がほとんどない良質の金属-半導体界面であるため、光によりSi側に生じたキャリアーがPtSi界面付近を移動し伝導に寄与するためであると考えられる。
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