遍歴4f電子系CeRu_2Si_2において80KOeの外部磁場でメタ磁性的振る舞いが観測され、ド・ハ-スアルフェン(dHvA)振動数ブランチやサイクロトロン有効質量の磁場依存性の詳細な報告がされた。そのdHvA振動数の角度依存に対して、メタ磁性転移前では4f電子を遍歴電子としたCeRu_2Si_2の我々のバンド計算の結果から説明することができる。一方、メタ磁性転移後ではLaRu_2Si_2のバンド計算の結果と対応させることができる。 今研究では、低磁場における遍歴4f電子状態がメタ磁性転移前後にどのように変貌し、フェルミ面に寄与しているかを理解するために、磁場依存性を考慮したスピン分極した相対論的LAPW法を使って、外部変数の関数としてCeRu_2Si_2の電子状態とフェルミ面の変化を調べた。この方法では、外部磁場によるゼーマン分裂が主要な効果であると仮定して、APW球内の相対論的基底関数を展開した。そのため、スピンによる縮対がほどけ、分裂する。計算により、外部磁場を強くするにつれてより多くのバンドがフェルミ面を横切る結果となった。そのため、簡単に実験を説明することがでない。 この研究から次の重要性が理解することができた。小さな外部磁場においては、4f電子のスピン・軌道分裂したJ=5/2とJ=7/2の軌道がほぼ独立して、ゼーマン効果によりバンド幅が広がる。しかし、非常に大きな磁場においてはこの二つの軌道が独立の量子状態を取れず、混成して新しい結合状態を作ることが分かった。メタ磁性に関して実際の定量的な考察を行うためには、この混成軌道を考慮した理論が要求される。
|