研究概要 |
この研究課題の中核をなすサブミリ波ESRは本年度も多くの成果を上げた。特にこの研究課題に関連した仕事ではS=1のハルデン系Y_2BaNiO_5に対してS=1/2であるスピンパイエルス物質CuGeO_3のg値がスピンパイエルス転移点以下の温度で大きくシフトし、かつ周波数依存性があることが我々の系統的なサブミリ波ESR実験から明らかとなった。特にこのシフトはスピンパイエルス相と転移磁場以上でのM相ではまったく逆のシフトを各軸で示しており、このことはこれまでその磁気状態が実験的に明らかではなかったM相に関する重要な知見を与えるものと考えられる。その他CsNiBr_3における銷間の第二近接相互作用の存在や、Ba_2Cu_3O_4Cl_2やY_2BaCuO_5の反強磁性状態が我々のサブミリ波ESRから明らかとなった。Y_2BaNiO_5に関しては青山学院大学の秋光研から供給された単結晶の各軸に関するサブミリ波ESRを4.2Kで行い、NENPなどほかのハルデン系にCu^<2+>を置換した時見られるような鎖端によると考えられる共鳴が多数観測された。その解析から過剰酸素によるlow spin stateのNi^<3+>がCu^<2+>と同じ役割をになっており、実験結果を説明するには約10cm^<-1>の交換相互作用を仮定する必要があることが明らかとなった。ハルデンギャップ間の直接遷移の観測は震災で遠赤外レーザーが甚大な被害を受けたため達成されていないが、4.2Kから50Kの温度変化の観測から各軸の3重項内の遷移と考えられる吸収が観測され、その解析からDは約7cm^<-1>,Eは約0.17cm^<-1>と見積もられた。このように本研究は十分その成果が上がったと考えられる。
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