f電子の自己相互作用補正の効果を定量的に評価するには、最初に他の近似などによる不定要素を取り除く必要がある。本研究期間に計算を行ったLaAgやLaPb3系はf電子が占有されていないために本来f電子の自己相互作用補正の効果は見られないが、これらの結果をみると、原子核近傍のポテンシャルの形状の非球対称成分を考慮することで(FLAPW法を用いる事で)かなり大きな計算結果の改善がみられた。MT近似(球対称近似)をした場合は、MT球半径の取り方に計算結果が依存することは以前から指摘されており、MT球半径の大きさの取り方に原理的には依存しないFLAPW法で計算した場合の方が実験結果との一致はよい。この結果を受けて、Pr金属などの一重項基底状態を取る物質について、FLAPW法による通常のバンド計算を実行した。引き続き、自己相互作用の効果を調べるために、MT球内のf電子の状態をスピン軌道相互作用を考慮した結晶場の固有状態で指定するプログラムを作成に取り掛かったが、残念ながら汎用的なものは完成には至っていない。これと並行して、MT球内の波動関数として、直接非球対称ポテンシャルの解をグリーン関数の方法を用いて解く方法についてもプログラムの作成を行った。これについては、スピン軌道相互作用を含まない場合についてはほぼ完成したが、スピン軌道相互作用を考慮する場合に拡張しなければf電子系には使えない。しかし、このグリーン関数による解法は、基底関数が結晶場の固有状態になっており、自己相互作用補正の効果を調べるのに都合が良く、遷移金属等では結晶場の大きさをMT球の内外からの寄与について詳細に調べた。
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