大きく分けて以下の3つの成果があった。 1.磁性細線の磁化過程(古典的)の理解 巾1μのNi細線を複数つくり、外部磁場を反転させたときその磁化過程を測った。磁化緩和は時間に対してよく知られたlog(t)の依存性をもち、これから決めた緩和率の様子から、磁化過程は主に磁壁が80K程の強さのピン止めエネルギーからはずれて動くことによっておこることがわかった。さらに1000Åのより細い線では緩和がきわめて遅く、磁化構造の変化する過程が少なくなっていることがわかった。 2.磁性細線中の磁壁の新しい量子的ふるまいの可能性 メゾの磁性細線中での磁壁はカイラリティという内部自由度をもっている。このカイラリティは2つの安定な値±1をとりうるが、強いピン止めのもとでは、これらの間を量子トンネルによって振動する可能性があることを理論的に予言した。またその振動数の定量的な値を、実際の実験状況の場合を想定して計算した。 高温超伝導体中の磁束の新しい状態の発見 メゾの磁性体は、セミマクロな物体の運動というテーマであるが、この観点から見ると、第2種超伝導体の磁束の運動と共通点がある。そこでLa_<1.85>Sr_<0.15>CuO_4の単結晶と、さらにそれに重イオン照射によって欠陥をつくった試料での、磁束の相構造を交流帯磁率で調べた。その結果、磁束系がグラス-液体転移を起こす際、欠陥がある試料では、磁束の液体中で局所的な格子が欠陥にピン止めされた状態を経て2回の転移によっておこることを見つけた。
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