研究概要 |
連続空間での多体系を扱う拡散モンテカルロ法は,フェルミ液体を扱う際に生じる負符号問題を回避するため、多体波動関数の節(ノード)を試行関数のノードで近似する方法が有効と考えられてきた。しかし、その妥当性は明らかでなく、電子相関効果を表すジャストロー因子とスレータ行列式の積からなる試行関数には必ず変分エネルギーの局所的発散を生じる等の問題を残している。 本研究においては、拡散モンテカルロ(DMC)法の妥当性と限界を指摘し、試行関数のノードを拡散過程において最適化することで厳密解に近づく手法を考案した。具体的には、まず以下の点を明らかにした。 1.ジャストロー因子は、負の運動エネルギーを持つトンネル状態を表す一方で、スレータ積の与えるノード面の上下で逆符号を持つ局所変分エネルギーの発散を生じる。 2.DMC法はこの局所エネルギー場のなかのFokker-Planck(FP)方程式を解くことに相当するが、エネルギー揺らぎのため、定常解はノード面の上下で密度分布に必ず跳びを持つ。 3.基底状態と試行関数の積f(R)は、試行関数が局所変分エネルギーの揺らぎを持つとFP方程式の定常解になっていなく、実際にはDMC法で基底状態が求められない。 そこで、本研究では、ノード面近傍でf(R)とその勾配が満たすべき連続性(基底状態と試行関数の持つ連続性から導出される)を回復することにより、拡散過程においてノード面の最適化を行う拡散モンテカルロ法を提案した。(日本物理学会第51回年回講演予定、投稿準備中)今後はより効率的な計算方法を開発し、その有効性を分子などの系で確認する予定である。
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