低温まで磁気秩序を示さない重い電子系のCeRu_2Si_2は、磁場HをかけることによりH_M〜7.7Teslaで磁化が急激に増大するメタ磁性的な振舞いを示す。このメタ磁性にともない、様々な物理量がH〜H_Mで急激に変化する。さらに最近、フェルミ面の急激な変化がド・ハ-ス-ファン・アルフェン効果の実験により報告され、注目を集めている。 この問題を理論的に解明するため、U=∞の格子アンダーソン模型の磁化過程を1/N展開理論により調べた。1/N展開の0次近似におけるスレーブボソンと伝導電子の1粒子グリーン関数を与える自己無撞着積分方程式を数値的に解いた。その結果、絶対零度では、臨界磁場H_Mにおいて磁化Mが折れ曲がり、微分帯磁率dM/dHに飛びが現れることを示した。ここでH_Mは、ゼーマンエネルギーがスレーブボソンの共鳴準位の束縛エネルギーE_0と一致する条件により決められる。H<H_Mでは、フェルミ面はLuttinger総和則によって決まる大きなフェルミ面であるが、H>H_Mではフェルミ面は急激に変化し、ほぼ伝導電子のみで決まる小さなフェルミ面となる。このメタ磁性の起源は、H<H_Mでは寄与しないインコヒーレントなf電子が、H>H_Mでは有限の寄与を与えることに起因する。有限温度では、微分帯磁率dM/dHはH〜H_Mでピークをとり、そのピークの高さは低温になるほど大きくなるが、T→0では発散せず一定値に近づく。零磁場帯磁率がピークをとる温度T_<max>より高温では、零磁場においてもインコヒーレントなf電子が重要な寄与をもつため、メタ磁性的な振る舞いは消失する。また、H_MとT_<max>はともに、低温のフェルミ液体状態を特徴づけるエネルギースケールE_0に比例する。以上の結果は、CeRu_2Si_2における実験結果とコンシステントである。
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