輻射場の密度行列の測定を行うためには、まず、真空の揺らぎの確率分布関数を測定できる技術の確立が必要である。具体的には、光ビームをビームスプリッターで1対1に分割したときに、二つの出力の強度の差の揺らぎが、量子雑音レベルに到達している必要がある。本研究では、当初光強度が強い場合の確率分布関数の測定を目指したので、特にこの要請を満たすための条件が厳しくなった。強度が強い場合の確率分布関数の測定が可能であれば、応用範囲が広がると考えたためである。何の工夫も施さないと、差電流には大きな(古典的)過剰雑音が観測される。過剰雑音を低減するため、偏向子を用いて偏光の揺らぎ小さくする、光ファイバーでビームのポインティングスタビリティを向上させた。しかし、実験で得られた電圧値の揺らぎは、量子雑音レベルから予想されるものより大きくなった。また、電圧値の揺らぎの入力光強度依存性は、平方根になると予想されるのに対し、実験で得られたデータはほぼ比例していた。つまり、強度が強い場合には、除去することが難しい、光の強度に比例する古典的な揺らぎが存在することが明らかになった。チャージセンシティブアンプを用いた弱強度の領域では、揺らぎの大きさは、強度の平方根に比例する結果が得られた。以上の結果から、微弱領域では、量子雑音レベルの測定が可能であることが分かった。量子雑音レベルで、揺らぎの分布関数が得られないので、真空の密度行列を計算するための基礎データといして用いることが出来る。
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