筆者はこれまで、軸対称を仮定した2次元のシミュレーションにより、自転している星では、無回転の星よりも即時超新星爆発が起こりにくいことを明らかにし、ニュートリノによる遅延爆発の重要性を示してきた。また、自転星で遅延爆発が起こった可能性を示唆する観測事実として回転超新星からの重力波の重要性も明らかにした(研究発表論文1)。こうした経緯を踏まえ、遅延超新星爆発メカニズムをより詳細に研究する必要が出てきた。これまでの研究は次の二点において不十分であった。まず、ニュートリノ輸送計算に妥当性の疑われる近似が用いられていること。そして、遅延爆発が起こるようなダイナミカルタイムスケールよりずっと長い時間にわたってシミュレーションが行われていないことである。本研究ではこの二点の改善に主眼がおかれている。まず、後者に関しては計算時間の足かせになっている流対計算部分を完全陰解法でコーディングすることを行った。その際、近年多次元計算で目覚ましい成果を上げているGodunov法をLagrange的一般相対論的流体方程式に応用した。結果は大変有望で、典型的なテスト計算においては十分な精度でこれを満足し、また応用上より重要な超新星爆発の断熱計算ではダイナミカルタイムスケールをはるかにこえて計算できることも示された。また、中性子星平衡解も追えることがわかった。これらは、遅延超新星爆発から原始中性子星形成に至るプロセスを数値的に追う上で欠かせない条件である。こうした成果は投稿論文としてThe Astrophysical Journalに投稿中である。一方、ニュートリノ輸送は、近似なしにボルツマン方程式を解くことにする。これもすでに着手され、位相空間での移流項部分はコーディングが終わったところで、テストが行われている。また、従来の近似法との比較も行うために、多エネルギーグループ流束制限付拡散近似法によるニュートリノコードの組み込みに向けた準備も進められており、流体部分はすでに完成している。
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