本年度行った研究は、以下の2つの内容からなる。 1 成層圏モデルによる成層圏の季節変動の再現 対流圏と成層圏の力学的相互作用を明らかにするうえで、対流圏だけでなく、成層圏の季節変動そのものが精度よくシミュレートされていることが不可欠である。本研究では成層圏モデルにパラメタリーゼーションとして取り込まれる重力波の季節変動に与える影響を調査し、以下のことが明らかにされた。 (1)重力波は、南半球より北半球でメソポ-ズ逆風層の維持に貢献している。これは、下部成層圏の西風が、一年を通して南半球の方が強いことに起因している。 (2)この傾向は、パラメタリゼーションのスキームや重力波の与え方にそれ程敏感ではない。 ここで得られた研究成果は、1995年日本気象学会秋期大会で発表し、現在論文投稿準備中である。 2 対流圏・成層圏の力学変動とオゾン変動の関係 NMC客観解析データとTOMSデータを用いて、対流圏成層圏の力学場の季節内変動とオゾン全量の変動を調査した。力学的な輸送効果はQ-mapにより評価した。その結果、 (1)北半球では、Q-mapの変動とオゾンの変動は、成層圏で正、対流圏で負であり、南半球では、成層圏で正、対流圏では、顕著な相関が見られない。 (2)この傾向は、プラネタリースケールの擾乱に対して特に顕著である。 (3)これらの結果から、北半球でも極渦内のオゾン濃度は、その周囲より小さいことが示唆された。 ここで得られた研究成果については、論文投稿準備中である。
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