研究概要 |
延性剪断帯におけるパーコレーション過程に関する研究として,天然の花崗岩中に見られる変形組織の解析と,パソコンによる長石ポ-フィロクラストの形態配向発達のコンピューター・シュミレーションを行った。 天然の花崗岩としては,中部地方中央構造線沿いの花崗岩マイロナイトに見られる長石ポ-フィロクラスト中の粒内割れ目の発達過程を定量的に記載した。その結果,粒内割れ目は低温型のマイロナイトの初期から中期における長石の細粒化に最も重要な変形であること,またこの粒内割れ目は長石の粒径が減少していくとともに形成されにくくなることがわかった。今後は,この解析を歪勾配が存在するルートで系統的に行う予定である。 また,この解析と平行して,マイロナイト化作用以降の変形現象についても詳細な記載をおこなった。マイロナイトは地下約10km程の深度で形成された後,地表まで上昇している。この上昇過程でどのような変形現象が起きているのかを検討した結果,延性-脆性遷移領域において水圧破砕が起きていることを見いだした。これは,地表付近での断層運動による破砕作用と地下深部での塑性流動の間の岩体の変形現象を考察する上で大変重要である。今後,より広域的な解析を進める予定である。 このほかに,飛騨帯の眼球状片麻岩と飛騨花崗岩の予察的な調査も実施した。そこでは,パーコレーション過程を研究するのに適した変形組織を観察できた。来年度以降,系統的な調査を始めるつもりである。また,カナダの金鉱床でも変形解析したので,論文発表した。 さらに,花崗岩マイロナイトに代表される粗粒な粒子を含む組織の記載方法として情報のエントロピーを用いて,複雑な定向配列をひとつの値として記述する方法を新たに開発した。そして,昨年論文発表した理論的な定向配列をこの値で表し,天然のマイロナイトと比較した。この研究は現在論文を準備しているところである。
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