研究概要 |
山梨県早川流域において,糸魚川-静岡構造線(以下糸静線)の断層破砕帯を中軸とする南北幅5km東西延長15kmの地域の地質踏査を行ない、糸静線の活動の影響が及んだ領域を明らかにした上で、断層破砕帯内部の変形小および微小構造を野外および鏡下において記載し、糸静線の活動ステージの区分を試みた。以下にその概要について述べる。 ○当地域では、糸静線は早川にそってほぼ南北方向に走る高角度断層である。糸静線の西側には、古第三系の瀬戸川層群の主にスレートからなる地層が、東側には、新第三系の堆積岩類および火山岩類が、それぞれ分布している。これらの地層は、糸静線に対して時計回りに僅かに斜交した姿勢を示し、糸静線に切断されている。また糸静線近傍では地層の走向が糸静線に収斂してほぼ平行になる部分が認められる。このことは糸静線の活動に左横ずれのステージが存在したことを示している。 ○糸静線の断層面を含む断層破砕帯は調査地域内で9ルートにおいて良好に露出している。断層活動に伴う破砕の影響の及んでいる幅はいずれのルートにおいても片側50mを越えていない。破砕帯中の岩石(断層破砕岩類)は粘土鉱物を大量に含み、これらの定向配列にともなう逆断層の非対称面構造が発達している。面構造上の断層条線は高角度西傾斜を示す。以上のことは、糸静線に西側の地層を上盤とする逆断層活動のステージが存在したことを示している。 ○糸静線の断層面が確認できる9露頭のうち、5露頭で糸静線を切断する共役型の小断層が見いだされた。これら小断層のσ1はいずれも東西方向,σ2はほぼ鉛直方向を示している。このことは、東西方向からの圧縮が上記の2ステージに引き続いて起こったことを示している。 以上のように糸静線の変形ステージが3ステージ識別された。今後は瀬戸皮スレート帯が糸静線の変形帯であった可能性も考慮に入れ、さらに分解能を上げていく所存である。
|