研究概要 |
本研究は、Hg-N_2vdW錯体の光解離過程:Hg(^1S_0)-N_2+hv→Hg^★(^3P_1)-N_2→Hg^★(^3P_0)+N_2の途上における波束の時間発展をフェムト秒超高速レーザーポンプ・プローブ法を用いて実時間観測することによって、衝突微細構造遷移過程:Hg^★(^3P_1)+N_2→Hg^★(^3P_0)+N_2の動的機構に関する詳細な知見を得ることを目的としている。 光励起後の波束伝播を蛍光信号におけるビ-ト構造として観測するためには、A→aあるいはB→a遷移を経て解離しつつある非束縛状態のHg^★(^3P_0)-N_2錯体を、ある特定の核間距離において選択的に検出しなければならない。観測する蛍光信号(Hg7^3S_1→6^3P_0)は、プローブ光によるHg^★(^3P_0)-N_2錯体のE←a励起に起因するものである。この際、E状態およびa状態ポテンシャルの形状によっては、あるプローブ光のエネルギーに対する励起の終状態が束縛状態になってしまい上記の蛍光信号が観測されない場合があり得る。そこで、第一段階としてHg^★(^3P_0)-N_2衝突錯体のE←a励起スペクトルをナノ秒パルスレーザーを用いた遠翼ポンプ・プローブ法によって測定し、得られたスペクトルを理論計算で再現することによって、E状態およびa状態ポテンシャルの形状に関する知見を得た。この結果、Hg7^3S_1-6^3P_0共鳴線よりも200cm^<-1>だけ高エネルギー側の光をプローブ光として用いれば、解離しつつあるHg(^3P_0)-N_2錯体を選択的に検出できることが明らかになった。これらの情報をもとに、再生増幅器の基本出力パルス(波長760nm,時間幅200fs)の波長逓倍や白色光発生等を用いることによって、適切なフェムト秒ポンプ・プローブパルスの発生を試みた。しかし、増幅用の30HzYAGレーザーの出力が不安定であったために、再生増幅器のパルスエネルギーのばらつきが非常に激しく、満足なポンプ・プローブパルスを得ることができなかった。そこで再生増幅システムを10Hzに改造した。現在、安定したポンプ・プローブ光の発生を再度試みている。
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