本研究は分子を基低電子状態においたまま、電子励起状態の振動スペクトルを測定することを目的としている。その手段として、3次非線形ラマン分光法に着目し、本年度は、その装置の立ち上げに着手した。3次非線形ラマン分光装置は、大きく(1)光源、(2)光学系、(3)試料循環系、(4)散乱光検出系、(5)データ処理系の5つの部分にわけられる。光源については、2台の色素レーザーの励起するために用いているNd:YAGレーザーの2倍波および3倍波をそれぞれ1:1に分割するビームスプリッタを購入し、非線形ラマン分光実験に必要な分子振動の振動数程度離れた波長可変のレーザー光が得られるようにセッティングをした。試料循環系については、ペリスタロティックポンプ、フローセルからなる試料循環装置を構築した。散乱光検出系については必要な光学部品の購入をおこない、現在、組立中である。今後、チトクロームc等のサンプルについてテスト実験をおこなう。また本研究と相補的な、ポンプ・プローブ法によるポルフィリン電子励起状態の共鳴ラマン測定もおこなった。
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