本研究では、ルテニウム錯体を金属触媒として用いたBelousov-Zhabotinsky(BZ)型化学振動反応系の分岐現象に関するキャラクタリゼーションを光照射を外部制御因子として連続流通撹拌反応槽にて行った.その化学組成はルテニウム錯体/臭素酸/マロン酸/硫酸とし、光源のゆらぎに起因する照射光強度の不精密さを抑制する装置を作成した. (1)照射光強度制御システムの作成 反応槽直前で照射ビームの数%をサンプリングし、フォトダイオードで検知してコンピュータで記録した.照射ビームの強度は可変型NDフィルタを用いることにより制御した.用いた可変型フィルタは円盤型であり、照射ビームはこのフィルタの任意の領域をフィルタに対して垂直に通過する.コンピュータ制御下のステップモータで、そのフィルタを回転させることで照射ビームの強度を制御する.反応槽直前でサンプリングした照射光強度をステップモータの駆動系にフィードバック(PID制御を採用)させることにより、照射光強度の安定化を効果的に実現した. (2)分岐現象のキャラクタリゼーション 本研究で作成したコンピュータ制御型照射光強度制御システムにより、光強度を連続掃引することが可能となり、分岐点近傍のみならず広範囲における観測の自動化が可能となった.この方法により外部制御因子である臭素酸の初期濃度と照射光強度で張られる状態図を作成した.他の実験条件は反応温度25度、滞留時間5.6分とし、臭素酸以外の出発物質の初期濃度は次の通りである.マロン酸:4mM;硫酸:0.8M;ルテニウム錯体;0.2mM。3つの異なる状態(振動状態・還元定常状態・酸化定常状態)が観測され、振動-還元定常状態と振動-酸化定常状態間で分岐現象が観測された.分岐点近傍では大振幅振動が不連続的に、ヒステリシスを伴わず分岐することが観測された.
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