野外での調査はシマヘビ、ヤマカガシ、およびアオダイショウを対象としたが、アオダイショウは個体数があまり多くなかったので、主に前者2種を中心に調査、観察を行う結果となった。胃内容物の調査から、これら2種は主にカエルを餌としていることがわかった。とくに、4月後半から7月前半にかけて、これら2種は調査地域内にある小さな田圃に多く集まり、そこで繁殖しているシュレ-ゲルアオガエル、モリアオガエルを主食としていることがわかった。これらのカエルはともに夜行性であり、昼行性であるシマヘビとヤマカガシは田圃のあぜに沿ってゆっくり移動しながらあぜの泥にあいた穴を探索し、隠れているカエルを見つけだして捕らえていることが直接観察により明らかになってきた。この点において、両種とも「寝込み襲いの探索型捕食者」であることが示唆された。さらに、一部の個体には電波発信器を装着しテレメトリー法による調査を行って、短期的な移動様式と採餌範囲を同時期に調べた。この結果、前述の田圃に出現する個体の移動パターンは両種とも2つに分けられることがわかった。すなわち、田圃内とその周辺のみを移動するタイプと、400m以上の距離を移動するタイプである。以上の結果を総合すると、本調査地域におけるシマヘビとヤマカガシの間に採餌行動の大きな差は認められない。しかしながら、捕食していたカエルのサイズを比べるとヤマカガシの方がシマヘビよりも大きい傾向が見られ、また、シマヘビはカエル以外もわずかながら利用していたなどの、2種間の違いも認められている。全体を通してデータはまだまだ断片的であり、今後さらに追加調査を行って結果を確証していく必要がある。さらに、予定していた捕食行動の室内実験は現在進行中であり、この件についても継続調査が必要である。
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