本研究では、植物の器官再分化を遺伝学的に解剖してその全体像を捉え、脱分化・再分化の基本機構を明らかにすることを目指して、シロイヌナズナの根再分化に関する温度感受性突然変異体の単離と解析を行った。エチルメタンスルフォン酸処理で突然変異を誘発し、2回の自家受粉後、個体別に種子を収穫して作出したM3系統群を対象に、胚軸からの根の再分化を指標としたスクリーニングを行い、最終的に5系統の温度感受性変異株を得た。遺伝学的解析の結果、これら5系統における温度感受性はそれぞれ異なる1遺伝子座における劣性変異に起因することが明らかとなり、当該(野生型)遺伝子座をRRD1〜5と名付けた。なお、苗条再分化を指標として既に単離していた温度感受性変異体の中で、srd2は根再分化に関しても温度感受性を示すが、rrd1〜5のいずれもsrd2とはallelicでなかった。予備的な解析により、各RRD遺伝子は脱分化から根の再分化と成長までの異なる段階に関与することが示唆された。各変異株は野生型との戻し交雑を繰り返した後に自家受粉させることで、遺伝学的な純化を行った。現在純化した変異体を用いて本格的な生理特性解析に着手している。また、器官再分化の様々な中間段階にある外値片からRNAを調製して混合し、これをもとに均一化cDNAライブラリーを作成した。今後、本ライブラリーから無作為に選んだcDNAクローンをプローブにRNAゲルブロット解析を進めることで、根再分化過程での遺伝子発現を類型化し、これに対するrrd変異の影響を調べる予定である。
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