研究概要 |
タバコ培養細胞BY-2の色素体は、オーキシン(0.2mg/1の2,4-D)を含む通常の培地中では未分化名原色素体の状態を保つが、オーキシンのかわりにサイトカイニン(1mg/1のBA)を含む改変培地中では大量のデンプンを蓄積し、アミロプラストへと分化する。一方、タバコ植物体の葉肉細胞中には葉緑体が存在する。これら3種の色素体からそれぞれの色素体核(DNA-タンパク質複合体) を単離し、色素体ゲノムの転写・複製活性を比較した。原色素体の場合、細胞の増殖初期過程で一過的にDNA合成が活性化されるが、転写活性はほぼ一定のレベルを保つ。アミロプラスト分化過程では、DNA合成、転写ともに活性は低下する。成熟した葉緑体では原色素体に比べDNA合成活性は約1/4に低下しているが、転写活性は約15倍に上昇していた。このようにそれぞれ特徴的な機能を示す原色素体核、アミロプラスト核、葉緑体核を構成するタンパク質のうち、DNA結合性タンパク質をサウスウェスタン法により比較した。原色素体核およびアミロプラスト核に共通する主要なDNA結合性タンパク質は78, 64,および50kDaである。その他に原色素体核およびアミロプラスト核に特異的なDNA結合性タンパク質も検出されている。また、葉緑体核の主要なDNA 結合性タンパク質は120, 70, 50,および26kDaであった。これらのDNA結合タンパク質の殆どは3M Nacl/5M尿素処理により可溶化されるが、葉緑体核特異的70-および26-kDaタンパク質は一部不溶性画分に残留する。これら難溶性のDNA結合タンパク質は葉緑体核と膜系との結合に関与している可能性がある。また、単離原色素体核を用いてゲル内アッセイ法により色素体ポリメラーゼ(116 kDa)を検出した。現在、このDNAポリメラーゼ量の変化と色素体ゲノムの複製活性との間に相関関係が見られるかどうか検討している。
|