トランスポゾンタギング法は突然変異体から変異を起こした遺伝子を単離するのに非常に効果的な方法であり、トウモロコシやキンギョソウにおいてトランスポゾンタギング法を用いて多くのアントシアニン生合成系の構造遺伝子および調節遺伝子が単離されている。本研究では、トウモロコシのトランスポゾンEn-Iを導入したシロイヌナズナから見つかったアントシアニンがふ入り状になる突然変異体(an12)を用い、この挿入変異体からアントシアニン合成に関与する遺伝子の単離を行った。サザンハイブリダイゼーションの結果から約4.5kbpのHindIII断片に目的の遺伝子があることを確かめ、さらにIPCR法により挿入されたI-エレメントに隣接する遺伝子の一部を増幅し、それをプローブに用いcDNAライブラリーおよびゲノミックライブラリーをスクリーニングした。スクリーニングの結果、一種類のクローンをcDNAライブラリーから、また互いにオーバーラップする二種類のクローンをゲノミックライブラリーから得た。これらの塩基配列を調べたところ、ANL2遺伝子は一部まだ不明の部分が残っているが約10個のエクソンからなる事が明らかとなった。また、転写産物は約3kbpの大きさで、その塩基配列をデータベースで検索したところ、シロイヌナズナの表皮の毛の形成に関与しているGL2遺伝子とホモロジーがあることが明らかとなった。GL2遺伝子はホメオドメインをもった調節遺伝子であることが指摘されており、このANL2にも良く似たホメオドメインが存在することから、ANL2もアントシアニン合成に関係した調節遺伝子であることが強く示唆される。
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