紅色非硫黄光合成細菌Rhodobacter capsulatusの光合成反応中心とアンテナ色素複合体の構造遺伝子はpuf、puh、pucと呼ばれる3つのオペロンにコードされ、これらの転写は好気下で抑制、嫌気下で促進される。この調節にはRegAとRegBの2つの遺伝子調節因子が関与している。RegAとRegBはそれぞれ、原核生物の情報伝達系である二成分制御系を構成するレスポンスレギュレーターとセンサーキナーゼである。センサーキナーゼRegBが嫌気条件を認識すると、まず、RegB′上のヒスチジンが自己リン酸化され、ついで、そのリン酸基がRegA上のアスパラギン酸に転移され情報が伝達される。今年度は、RegBの膜貫通性領域を欠いたRegBとRegAをそれぞれ大腸菌内で大量発現後、精製し、試験管内で酸化還元状態がRegB′の自己リン酸化能にどのように影響を与えるかという点と、RegB′からRegAへのリン酸基転移が酸素によって阻害されるかどうか検討した。まず、大腸菌内で発現後精製したRegB′を尿素で一度変成させ、透析によって構造復元させた。このとき、空気下で復元させるとRegB′の自己リン酸化能はほとんど認められなかったが、DTTを加えると強い自己リン酸化能が認められ、嫌気下でDTTを加えると、一層強い自己リン酸化能が見られた。また、嫌気下DTT存在下で復元後、空気酸化するとRegB′の自己リン酸化能は著しく低下するが、嫌気下でDTTを加えると自己リン酸化能が回復し、RegB′の自己リン酸化能が酸化還元状態によって可逆的に調節されることが判明した、次ぎにシステインの修飾剤であるρ-クロロマ-キュリー安息香酸でRegB′を修飾するとかなり強い自己リン酸化能が空気下でも認められた。RegB′を嫌気下DTT存在下で自己リン酸化後、RegAへのリン酸基転移を空気下、嫌気下で検討したが、いずれの場合もRegAのリン酸化は同程度に起こった。
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