性決定機構の確認 栃木県宇都宮市および千葉県夷隅郡より、産卵期に、トウキョウサンショウウオ(Hynobius tokyoensis)の成体を雌雄6個体ずつ、および5個体ずつ採集した。トウホクサンショウウオ(H.lichenatus)については、青森県弘前市より成体を雌雄4個体ずつ、福島県飯坂市より雄4個体雌1個体を採集した。これらにコルヒチン処理を施し腸管上皮の細胞より細胞分裂中期の染色体像を多数得た。核型分析を行ったところ、両種の全ての雄の核型は、全ての染色体対が同形対であったのに対し、両種の雌の全てのそれには、小型の染色体対に一対の異形対が認められた。したがって、トウキョウサンショウウオおよびトウホクサンショウウオは、雌ヘテロの性決定機構を呈し、雄はZZの性染色体構成、雌はZWの性染色体構成を持つことが明らかとなった。 W染色体に特異的なDNA断片の単離 千葉県夷隅郡産の雌のトウキョウサンショウウオの腸管のサンプルより細胞分裂中期像を得て、W染色体と、それとほぼ同形同大で識別の難しい13番染色体をマイクロディセクションで切り出し、PCRによって増幅した。クローニングを行い、各々のクローンをプローブとして、雌雄のDNAにハイブリダイズさせたが、雌に特異的なクローンを得ることはできなかった。このことは、W染色体に特異的なDNAがW染色体上にあまり蓄積されていないことによると考えられ、W染色体がZ染色体から分化してからあまり長い年月が経過していないことを示唆している。W染色体に特異的なDNA断片を得るには、より効率の良いクローニング法およびスクリーニング法の開発が必要と考えられる。
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