本年度は、中国雲南省黄蓮山と河口周辺、およびベトナム・コンクオン周辺で、オオタニワタリ類とヤクシマホウビシダモドキ類の成葉と胞子の試料を採集した。この生葉を用いてアロザイムの電気泳動的多型及びrbcLの塩基配列を調べた。rbcLの塩基配列は、PCR法とダイレクトシークエンス法を用いて決定した。そしてrbcLの塩基配列の異同に基づいて分子系統樹を作成した同時に、アロザイム多型は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって調べ、それに基づく分子系統樹も作成した。この両者の分子系統樹は、良く一致した。得られた分子系統樹によると、まず、ヤクシマホウビシダモドキ類には、2系統あることがわかった。一方、オオタニワタリ類については、大きく分けると、日本産のオオタニワタリ、リュウキュウトリノスシダをそれぞれ含む3群に分かれた。ただし、形態では、ベトナム産でリュウキュウトリノスシダと同様葉柄にキ-ルのあるものがシマオオタニワタリ(日本産)と近縁になる等、形態上のまとまりと分子系統樹は対応しなかった。さらに、個々の3群の中にもrbcLの塩基配列やアロザイム多型に基づく遺伝的距離の大きく異なるものが含まれていることもわかった。このことは、複数の種が3群のそれぞれに含まれることを強く示唆している。 次に交配実験であるが、アロザイム多型とrbcLの塩基配列に基づいて、識別された系統間および系統内で交配実験をすべく胞子を混ぜて播種した。現在、胞子体が発達中である。近く、アロザイム多型解析を行い系統間で交雑が起こったかどうかを調べる予定である。
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