研究概要 |
本研究では,4点曲げにより,シリコン試料に転位を導入した試料を作成した.これにより,十分に転位が導入された(表面転位密度〜10^8cm^<-2>)試料(4点エッジの中央部),ほとんど無転位の試料(エッジの外の部分)が得られた.このとき,重金属汚染をできるだけ避けるように注意した.また,両者は同じ熱履歴を経ていることが重要である.これらの試料のDLTS測定後,不純物の影響を調べるため銅を拡散させ,再度測定を行った.清浄試料の測定から,変形により158K付近と225K付近(エミッションレート114ms)に新たなピークが現れることが分かった.これらのピークは共に,銅を拡散させた後の測定において強度が増大した.このことは,これらのピークが転位と銅に関係することを意味している.即ち,意図せざる銅汚染があった可能性が大きく,転位が銅にデコレートされ,転位の歪み場により影響を受けた銅による電子準位がのこの2つのピークとして検出されたと考えられる.これらのピークは転位と無関係な他のピークの近くにあり,エネルギーレベルを求めるためには,ピーク分離を行う必要がある.そこで,DLTSの理論関数によるカーブフィッティングによりピーク分離を行った.その結果,これらのピークは単一の電子準位によるピークではないことが分かった.そのためエネルギーレベル等のパラメータは得られなかったが,このことは,前述の考察を支持する結果である. さらに,既存の走査型オージェ電子分光装置を改造し,EBIC像観察装置を製作した.しかしながら,観察に適した転位密度の試料を作成できなかったため,得られた像が転位像であると同定することはできなかった. 以上のように不純物の影響に関する知見は得られたが,現在さらに,適当な転位密度で不純物の影響を極力抑えた試料を作成することにより,転位自身に由来する電子準位の検出を目指している.
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