本研究では高分子系液晶の分子運動を解明するために、以下の2項目を主に検討した。 1.配向方法の検討 (s)-2-Methyl-butandiolとHexandiolならびにDimethyl bibenzoateを原料として光学活性な主鎖型高分子を合成した。この物質はIso-SmA-SmC^★と逐次相転移し液晶相をとることが既に報告されており、今回合成した試料の相転移温度はDSCならびに偏光顕微鏡によりIso-(220℃)-SmA-(133℃)-SmC^★-(114℃)-であることを確認した。液晶の配向方法を検討した結果、ITO電極をパタ-ニングしたサンドイッチ型セルに等方相まで加熱した試料を毛細血管現象を利用して充填することにより水平配向セルが作成できることを確認し、誘電率の測定に用いた。 2.誘電率測定による分子運動の検討 平成7年度科研費補助金によりKeithley社の高速電流アンプ(428型)を購入することができた。従前の誘電率測定システムに本装置を付け加えるとにより、1けた以上緩和周波数が低い高分子系液晶相での誘電緩和が計測可能となった。その結果、自発分極を持つSmC^★相において10Hz程度でゴールドストーンモードによる誘電緩和が観測され、さらにSmA-SmC^★相転移近傍ではソフトモードによる誘電緩和も確認された。隣接層間で分子(単位構造)が連結され集団揺らぎとしての分子運動が束縛される主鎖型高分子液晶においても、低分子系で確認されている液晶相特有の分子運動が存在することを指摘した。
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