本研究では光化学反応の選択性を活用して低温(300〜500℃)で高品質の窒化シリコンを推積し、ゲート絶縁膜として活用しうる優れた量子界面構造を形成することを目的としている。原料にSiH_4とNH_3を用いて、低圧水銀灯を光源とする直接光CVD法により、窒化シリコンを推積する。窒化シリコンの推積における気相反応を「その場観測」し、その解析結果を推積条件にフィードバックすることにより所期の良好な量子界面特性を得た。以下に具体的な結果を示す。 [気相反応]推積中の気相反応を時間分析質量分析法により解析した。NH_3/SiH_4ガス組成が小さい場合は気相中にSiH_xラジカルが、中程度のNH_3/SiH_4ガス組成ではSi_xN_yH_zラジカルが、NH_3/SiH_4ガス組成の大きい場合にはNH_2ラジカルが多いことを示した。 [量子界面特性]金属/窒化シリコン/シリコン(MIS)構造を形成し、量子界面特性を測定した。気相中にNH_2ラジカルが多く存在する推積条件で窒化シリコンを推積すると、界面準位密度と固定電荷密度とがともに多くなる。気相中にSiH_xラジカルが多くなると窒化シリコン膜の禁制帯幅が減少すると考えられ、量子界面への注入電荷量の増大をまねく。気相中にSi_xN_yH_zラジカルの多い条件で推積すると、界面準位密度は小さくなり、良好な量子界面特性が得られる。 [2段階推積]以上の結果をもとに、まず膜厚6nm程度を界面準位密度が最小になる条件で推積し、その後、十分な推積速度の得られる条件で推積する2段階推積により、界面準位密度3×10^<10>cm^<-1>eV^<-1>を示すゲート絶縁膜として有望な窒化シリコン/シリコン量子界面構造を得た。
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