最近、光学的等方性を有するガラス材料をポーリングすることにより、2次の非線形性が発現し、短波長への波長変換素子や光変調器への応用が期待されている。しかし、非線形ガラス材料を用いた薄膜光導波路デバイス加工は行われておらず、従って高効率なSHG素子の報告はなかった。 本研究では、高周波スパッタリングを用いて、石英ガラス基板上にゲルマニウムドープ石英ガラス薄膜を堆積させ、高温でポーリングを行うことにより、2次非線形性の発現、及び導波路デバイス加工と位相整合SHGの観測を行った。作製したガラス薄膜のポーリング処理により0.8pm/V以上の非線形性を得た。また、非線形性の光学的安定性の評価を行った。高温での加速試験を行い、アレニウスプロットを用いて常温での非線形性の寿命は310年と評価された。そして紫外高エネルギーのN_2レーザ光照射でも劣化はなく、紫外領域での高い安定性を示し、実用が可能であることがわかった。次に、この薄膜光導波路に基本波レーザ光を導波させ、緑及び青色のチェレンコフ放射型位相整合SHGを観測した。更に、フォトリソグラフィ技術を用いて初めて単一モードチャネル導波路を作製し、基本波光を伝搬させたところ、これ迄より1桁以上高効率の位相整合SHGを観測した。また、ゾルゲル法を用いてソーダライムガラス基板上にゲルマニウムドープ石英ガラス薄膜を合成し、ポーリング処理を行うことにより、ゲルマニウムドープ量30%のとき12.5pm/Vの非線形性を得た。この値はこれまでに報告された非線形ガラスの中で最大の非線形性であった。
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