極微弱光から比較的強い光までの広いダイナミックレンジを持つ大気観測用ライダーの受信信号強度を、デジタル信号処理により求めるDSP検出方式を提案したが、大量のデータ処理に時間がかかり定常的な測定に利用するまでには至っていなかった。今回の研究は、半導体技術特に高速信号処理デバイスの最近の発展を背景に、リアルタイム処理可能なDSP検出方式のライダー受信システムの開発を行い、従来のフォトンカウンティング法等との比較や実際の大気観測を行い、その実用化の問題等を明らかにした。実際には、現有のパーソナルコンピュータ(ペンティアムプロセッサ内蔵)に、最高500MHzサンプリングの高速デジタイザーボードを組み込み、DSP方式受光システムの信号処理部を製作した。コンピュータ本体にデジタイザーを内蔵することにより、高速なデータ転送が可能となった。C言語により、すでに定式化されている理論に基づき信号処理のプログラムを作成した。室内実験により現有の光電子増倍管の信号を処理し、入射光強度を変化させ、入射光強度に対する直線性のチェック、各パラメータの導出、ノイズ特性の確認を行い、理論通りの性能が得られる事を確認した。Nd:YAGレーザを光源とした現有のライダーシステムに本DSP検出方式受光システムを組み込み、現有のディジタルオシロスコープ及びフォトンカウンターとの同時観測により実際の大気データの測定・比較を行い、良い一致が得られ、実用性が確認された。
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