研究概要 |
生体試料の観測において、フォトン走査トンネル顕微鏡(フォトンSTM)は、空気中や液体中で、生きたまましかも非破壊的に高分解能観測が可能である。本研究では、我々の、光ファイバーを化学エッチングによる先鋭技術を用い金属蒸着により、30nm以下の開口をもつプローブ作成することに成功している。本研究では,そのプローブを用いて生体試料観測用フォトンSTMシステムを開発し、金粒子による本システムの評価を行った。本システムでは、Arイオンレーザからの光を開口つきプローブに導入し、試料を照射した。試料による散乱光を対物レンズで集め、光電子倍増管により検出した。試料は3次元移動可能なピエゾ装置に固定されており、試料-プローブ間距離を一定に保ちながら試料の2次元分布を測定する。試料-プローブ間のVan der waals力を利用し、試料-プローブ間距離を一定に保った。試料としてスライドガラス上に固定された鼠の脳の神経細胞を用いた。試料は染色されてるため、細胞像が高コントラストで観測できた。さらに、細胞間を結ぶ軸索内に信号伝達するためのmicrotubulinが束状になってる構造も初めて光で観測できた。一個のmicrotubulinの半値幅は約26nmであり、これは電子顕微鏡顕微鏡による結果(25nm)とほぼ一致する。本システムの高分解能を評価するため20nm直径の金粒子の観測し、像のフーリエスペクトルを計算した。金粒子を空間的にランダムな2次元ドット配列に置き換え理論的にフーリエスペクトルも計算した。これらからシステムの伝達関数を決定し、カットオフ空間周波数を求めた。その値は0.8nmに相当し、開口の直径より小さい値である。これは開口つきプローブの先端部分での金属とガラスの境界に高い空間周波数を持つevanescent場により生じるものだと考えられる。
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