本考案により、降旗は非線形偏微分方程式の導出過程を相当する離散数式で置き換えて差分スキームを構成することにより、エネルギー散逸や組成保存などの性質を差分スキームにおいて保証することに成功したうえに、その一部において近似解が真の解へと収束することを証明することにも成功した。まだ制限は多いものの、この考え方を進めることで多くの問題を安定かつ精度良く数値的に解くことができるようになると期待される。 具体的には、微分、積分、変分といった連続関数にのみ適用できる操作を離散関数にも適用できるように離散化し、その相互関係を崩さないように定義することから始まる。この道具を用いて、本来の非線形偏微分方程式の導出過程の式変形をそのまま離散化するのである。こうすることで導出された離散非線形偏微分方程式はそのまま差分スキームであり、問題の偏微分方程式の導出過程から導かれる性質は必ず受け継がれる。エネルギーの保存・散逸や、その他の保存量などはこうしたものが多いため、こうした点からも好都合である。また、エネルギーなどの量は目的関数の一種のノルムになっていることが多いため、こうした点からも好都合である。また、エネルギーなどの量は目的関数の一種のノルムになっていることが多いため、こうした場合はエネルギーの保存・散逸も保証することはすなわち目的関数をノルムでおさえることを意味する。つまり、差分スキームの安定性も同時に保証されるのである。 さらに、本研究において、こうした構成した差分スキームの一部を取り上げ、差分スキームが本の方程式に収束すると同時に計算された近似解が真の解に収束するかどうかを数学的に解析した。具体的には、Cahn-Hilliard方程式と呼ばれる非線形偏微分方程式を対象とした。これは数値計算上非常に不安定であり、数値的安定性と収束性を保証しようという本研究の実験対象としては非常に適したものである。結果としては、非常に満足のゆくものであった。構成した素分スキームが条件によらず安定であることを示せたばかりでなく、ある条件の下で近似解が真の解に収束することも厳密に示せた。 結論として、他の方程式に適用した場合にどこまで収束性を保証できるかを調べることや空間の次元数をあげるなどの課題は残されたものの、おおむね目的は達せられたといって良いだろうと思われる。
|