研究概要 |
本研究では,高周波誘導加熱技術を用いて,炭素微粒子を表面に固着させたチタン合金(Ti-6Al-4V)合金を急速に加熱・冷却することにより,高硬さを有する表面硬化層の形成を試みた.また,高周波誘導加熱処理を通じて,チタン合金の微視組織を変化させることにより,チタン合金の疲労強度の改善を試みると共に,処理材の疲労き裂進展挙動について,SEMを用いた詳細な連続観察を行った.その結果,以下の結論を得た. 1.上記の方法により,最大硬さHV400(母材硬さ:HV310),厚さ50μmの硬化層が形成された.しかしながら,他の表面改質法と比較すると,本表面改質法により形成される表面硬化層厚さは極めて小であることから,処理条件の設定等について,今後の検討が必要である. 2.高周波誘導焼き入れ処理(955℃2.3s,水冷)を施すことにより,チタン合金の疲労強度は28%(470MPa→600MPa)改善された.この疲労強度の改善は,繰り返し応力を負荷した際,焼き入れ時に生ずる残留β相に歪誘起マルテンサイト変態が生ずることに起因して,き裂の発生抵抗が大となるためと考えられる. 3.高周波焼き入れを行ったチタン合金のき裂進展挙動について詳細に観察した結果,結晶粒界におけるき裂の屈曲および分岐が多数認められた.しかしながら,進展速度については必ずしも納入材との明瞭な相違は認められなかった.
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