研究概要 |
熱間塑性加工は単なる成形加工技術ではなく,復旧および相変態を利用して組織を改善し,機械的性質を向上させる材質制御技術としての側面を持っている.しかしながら鍛造加工では材料内部のひずみ,ひずみ速度,温度等の分布が極めて複雑なため,材質の予測・制御は困難で,それらに関する研究はほとんどない. 本研究では,結晶粒径を微細化すると強度,靱性が向上することに着目し,鋼の熱間鍛造後の結晶粒径を予測する手法について検討した.具体的な内容および得られた結果は以下のとおりである. ◯加工条件が加工中および加工後のγおよびα結晶粒径に与える影響の実験的調査 S25C鋼を800℃〜1100℃の種々の温度に加熱・保持後,圧縮率10%〜50%の変形を与えた.各温度における加工直前・直後のγ結晶粒径ならびにその後のα粒径を実験的に調査した. ◯加工後のα粒径を予測する数式モデルの構築 実験結果を基に,加工直後のγ結晶粒径を初期結晶粒径,ひずみ,温度の関数として数式モデル化した.また,同じひずみに対するγ粒径とα粒径の関係から冷却後のα粒径を予測する数式モデルを構築した. ◯粒径予測のためのFEMプログラムの開発 以上のα粒径予測モデルを導入した剛塑性FEMプログラムを開発し,実際の円錐金型による熱間鍛造過程をシミュレートした.計算より得られた最終的なフェライト粒径分布は実験結果とほぼ一致しており,本プログラムが粒径予測に十分有効であることが確認できた.
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