研究概要 |
腐食摩耗を応用した複合電解研磨において,研磨中のAE信号を測定し,そのAE信号を解析し,研磨状態(腐食摩耗状態)に対するAE信号の特徴検出を試みた.研磨の基礎となる腐食摩耗実験は,SKD61工具鋼の放電加工された表面を,0.1mol/lのNa_2SO_4溶液中で飽和カロメル電極,対極に白金電極を使用し,950mVの電位を印可しセラミック球で摩擦することで行った.AE信号の解析は,まず,FFTおよびARモデル解析を行った.FFT解析の結果では,研磨状態の進行とともに,周波数分布形状に違いがあることが分った.また,10次のARモデル解析を行い,得られたARパラメータに対し,主成分分析を行った.その結果,第一主成分の寄与率は85%となり現象の変化の大部分を表すことが分った.この第一主成分の研磨サイクルに対する変化をみると,2万サイクルまでに上昇傾向があることが分った.2万サイクルでは,放電加工によってできた表面あらさおよび加工変質層が摩耗によってなくなり,下地が露出するようになる.この摩耗状態の差が解析結果に現れたと考えられる.また,この第一主成分にはばらつきがあり,これに対処するためファジィ推論を用いて補正を行った.補正は,1000サイクルまでの間の最小値を第一主成分の変化の原点とし,その値からの増加量を求めることで行った.その結果,2万サイクルに達した点で,8回試行したすべての実験で,補正された第一主成分値が0.2を越えることが分った.よって,この補正した第一主成分値によって,研磨状態(腐食摩耗状態)を推定することが可能と考えられる.
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