本研究は、将来の軽量耐熱合金として期待されているTi-Al系金属間化合物(特に超格子構造を有するTiAl_3を中心として)の燃焼合成における反応機構について微視的な立場から燃焼反応を凍結させ、その凝固過程も含めて反応経路を明らかにすることを目的としている。平均粒径約20μmのTiとAlの粉末をモル比1:3の割合で混合した後、ステンレスダイと圧縮試験機により圧縮し圧粉体試料とした。これを予熱ヒーターを兼ねた断熱流路に設置し、Arガスを流しながら、400〜650℃に予熱した後、試料の一端に点火する。この場合の最高温度と燃焼速度から、アレニウスプロットを描くことによってその勾配から総括活性化エネルギーを得た。その値は、347kJ/molである。また、燃焼途中で圧縮窒素ガスを吹き付けることにより反応を凍結させ、その断面を鏡面研磨した後、電子顕微鏡にて元素分析を行った。その結果、島状の断面内部中央ではTiがほぼ100%であり、その中心から同心状にTiの原子%が減少していることがわかった。したがって、融点665℃のAlが溶融しTi粒子を覆うと同時に反応が両者の界面から始まり、反応速度はTi原子とAl原子の拡散現象に支配されている。すなわち、アレニウスの拡散係数に従った燃焼現象であり、そのときの活性化エネルギーが上記の値であると言える。なお、最高温度は化合物TiAl_3やTiAlの融点より低く、Ti表面に固相の化合物が生成されると考えられるが、Al濃度が高い領域では液状に近いことが相図からわかるので、比較的容易に拡散できるものと考えられる。さらに、固相であるとしてもCuの固体中にNiやZnが拡散する際の活性化エネルギー200kJ/molとオーダー的には等しく、このような固相をAlが拡散するとの見方も、それ程物理現象から逸脱するものではないことがわかった。
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