一般に制御系の応答が遅い場合には、実目標値よりも位相を進めて仮想的な目標値を設定し、外乱などが入った場合にはその影響を受ける方向と逆方向に仮想的な目標値(これを仮想目標値と呼ぶ)を設定して、出力を仮想目標値に追従させるようにすれば、本来の目標値に対する応答の改善が得られることは明らかであると思われる。このような仮想目標値が制御系の情報を用いて、オンラインでフィードバック的に設計できれば、パラメータ変動や外乱にも対処可能な仮想目標値が設計でき、制御系設計の自由度が大幅に向上すると思われる。さらにこのような仮想目標値は、未来目標値の予見情報を利用する予見仮想目標値へと拡張するとさらに特性改善を図ることが可能となる。 本研究ではこのような要求を満たす実時間予見仮想目標値設計法を提案した。そしてこの実時間予見仮想目標値をクレーンの振れ止め制御系と3リンクDD(ダイレクトドライブ)ロボットの経路制御に応用した。クレーンの振れ止め制御系の、いかに振れ角を小さく、台車の位置を目標位置にいかに速く移動するかという制御要求に対して、移動と振れの重みに応じて要求に適した実時間仮想目標値の生成に関して実験的に検討を行った。またロボットの経路制御については、クレーン制御などのような時間目標値に対するものと異なって、経路応答を改善する必要があり、実時間予見仮想目標値設計の手法を経路制御にも適用して、経路応答を改善することに関しても検討を行った。そして実時間仮想目標値を用いることにより、ゲイン特性や位相特性が大幅に改善され、時間応答や経路応答に対しても大きな効果が得られることを確認した。
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