1.実験結果による架空地線の接地点の等価回路の作成とその妥当性の検討 配電系統における架空地線についての調査を行い、解析対象とする配電線を数100mおきに接地された架空地線と3条の相導体から構成することとした。文献調査の結果、多導体系から構成されるモデル配電線の架空地線の値が10Ω程度並びに80Ω程度の場合については、実測結果の報告例があったため、本実験では接地抵抗が40Ω程度の場合について実験を行った。一方、日本国内での測定点における大地導電率は、架空地線が接地されていない場合の誘導雷の実験を行い、その解析結果から推定した。多導体に生じる誘導雷電圧の実測結果と、水平方向電界を考慮した誘導雷現象解析手法による計算結果との比較から、接地点の等価回路を接地抵抗のみにより模擬した場合にも十分な精度が得られることが判明した。 2.配電線誘導雷現象に及ぼす影響 水平電界を考慮した配電線誘導雷電圧解析手法により、雷撃点方位、大地導電率、1点接地した架空地線の接地点位置をパラメータとして、標準的な帰還雷撃があった場合に架空地線が誘導雷電厚に及ぼす影響について解析を行った。架空地線を接地することにより、接地がない場合のこの点の誘導雷電圧に強度は比例し、極性は逆の誘導雷電圧が相導体に進行波として重畳する。架空地線が誘導雷現象に及ぼす影響はこの進行波の強度と到来時間遅れに大きく依存する。大地導電率の値が大きい場合には、接地がない場合の架空地線と相導体上の誘導雷電圧の極性が単一となるために、架空地線は相導体の誘導雷電圧を抑制する事となる。一方、大地導電率が小さくなると、雷撃点が線路の延長方向にある場合には、接地がない場合の架空地線および相導体上の誘導雷電圧の極性は単一にはならない。このため、1点接地の場合の架空地線の接地点位置によっては誘導雷電圧が接地前と比べて大きくなることがあることを明らかにした。
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