本研究では、宇宙技術開発の共通基盤である真空中高電圧絶縁技術の確立を目指して、真空中における帯電・放電現象について、以下のような検討を行った。 1.真空中不平等電界下における放電開始特性および放電形態 宇宙空間において支配的な残留気体成分となるHeガス、Arガスを対象として、中〜低真空領域(10^<-1>Pa〜10^5Pa)、不平等〜準平等電界下における放電開始特性を測定した。その結果、不平等電界下であるにも関わらず、部分放電を介さずに全路放電に至る圧力領域があることを明らかにした。さらに、このような部分放電/全路放電現象について、電界の不平等性を考慮したE/P(E:電界、p:圧力)のギャップ間分布を定量的に求めることにより、真空中における放電開始メカニズムを解明した。また、放電開始後の放電形態について、画像解析によって放電発光面積を定量的に計測し、ガス中の電子の平均自由行程によって放電形態の特性が規格化されることを見出した。 2.真空中帯電・放電実験装置の設計・製作および帯電形成 宇宙環境における各種絶縁材料の帯電・放電実験を一貫した真空環境下で実施するためのinsitu実験装置を設計・作製した。真空容器はステンレス製であり、内容積は38lである。真空容器の上部フランジには、帯電形成用の電子ビーム照射装置、帯電電位測定用の高電圧ケーブル導入ポート、放電発光観測用の石英窓を配置した。また、底面フランジには、ターボ分子ポンプの真空排気ポート、セラミックキャパシタンスマノメータ等の真空計ポートを取り付けた。さらに側面フランジには、帯電電位分布測定ケーブル操作用の直線導入機、有効径:160mmの観測窓を設置した。本真空容器内にPETフィルムを配置し、10^<-5>Paの高真空領域まで排気した状態で電子ビームを照射した結果、PETフィルム上に帯電領域が形成されることを確認することができた。
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