研究概要 |
本研究の目的は,零電流スイッチング三相電圧形インバータの新しい制御法と基本的な設計法を確立し,電磁ノイズを低減した高効率のソフトスイッチングインバータを開発することにある。 まず,スイッチング素子の導通状態を検出する新しい制御回路を開発し,検出の遅延時間を評価した。スイッチング素子の端子電圧から零電流を検出する新しい制御法は,検出の遅延時間が約70nsであり,先に発表した方法に比べて約1/20の高速検出が可能であることを確認した。 また,高速シーケンスが実行可能なPLD(Programable Logic Device)を用いた制御回路を試作し,共振電流の振幅制御を行なう制御シーケンスを導入した。新しい制御法は,スイッチングのタイミングを調整し,共振電流の振幅を負荷電流に応じて可変するため,零電流スイッチングによる導通損失の増加を低減可能であることを確認した。 さらに,従来のスイッチング素子に比べてオン電圧降下が約1/2の第3世代IGBTと漏れ磁束の少ないポット形の共振リアクトルを用いて5kVAのインバータを構成し,ハードスイッチングインバータとソフトスイッチングインバータの総合効率の評価を行なった。第3世代IGBTはオン電圧降下だけでなく,スイッチング損失も大幅に低減されているため,零電流スイッチングによるスイッチング損失の低減は僅かであった。一方,零電流スイッチングインバータは,導通損失がハードスイッチングインバータの約2倍となるので,零電流スイッチングを行なっても総合効率は改善できなかった。
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